京阪ホテルズ&リゾーツ

「進化」から「深化」へ。
次の千年の心地よさを追求した「千年ホテル」としての在り方とSDGsへの取り組み

ザ・サウザンド京都/京都センチュリーホテル

総支配人

櫻井 美和

京都の玄関口のホテルとして、SDGsを進める決意

新型コロナウイルスによる甚大な影響により、ホテル業界は約2年、まさに暗闇の中でしたが、コロナ禍を経て、マーケットや社会の大きな変化を感じています。特に「サステナビリティがホテルや旅行にどのように影響を与え、私たちはどのように取り組んでいくのか」を考える機会にもなりました。その中で行なったのが、一年間でSDGsに関する100の取り組みを行う「SDGs 100 アクション」です。社内から募集した858ものアイデアを元に、ホテル屋上での都市養蜂や、タイガー魔法瓶(株)と協力した不要ステンレスボトルの回収、客室の使い捨てプラスチックアメニティ廃止等を推進していきました。使い捨てプラスチックのアメニティ廃止はスタッフからも様々な意見がありましたが、SDGsを進めていくためには思い切ったことをやっていこうと決断。結果的に7割のお客様はご自分でアメニティをお持ちになり、2割の方はホテルで木製アメニティをご購入いただいています。そして1割の方からはお叱りのお声をいただきます。大変貴重なご意見として承りつつ、しかしSDGsを業界全体で進めていくためには、どこかが先んじて取り組んでいかなければいけない。そしてそれは、世界の観光都市・京都の玄関口に構えている私たちだからこそやらなければいけないと考えています。

「SDGs 100 アクション」では、結果的に2022年の一年間で102個のSDGsアクションを達成しました。お客様に様々な体験をご提供するだけでなく、スタッフも多くの知識を得て、SDGsに対する意識が変化しました。この経験は、コロナ禍で私たちが得た最も大きな収穫だったと思います。

SDGsの新しい取り組みとして、ザ・サウザンド京都は京都市内の西賀茂地域に畑を借りて、契約農家の方の「援農」を始めました。SDGsの取り組みを持続可能なビジネスに昇化させるべく、2023年1月には社内に横断組織としてアグリビジネス部を立ち上げ、ザ・サウザンド京都の「都市養蜂」と「西賀茂の援農」、琵琶湖ホテルの「環境農業」を3つの柱としています。畑の世話や収穫はホテル内から手が挙がったスタッフで行いますが、意外にも多く「参加したい」と声が上がりました。皆関心があるようで、お客様に安心安全で新鮮なものを召し上がっていただきたいという強い想いを感じます。お客様にもストーリーのあるものがご提供できるのは素晴らしいと思いますし、それがきっかけでスタッフとの会話も生まれます。そしてこのような取り組みが付加価値に繋がっていくと考えています。今後もアグリビジネスの推進を拡大していく予定です。

日本の宿泊施設として初めて、サステナブルツーリズム国際基準の認証を取得

2022年5月には、ザ・サウザンド京都と琵琶湖ホテルがサクラクオリティの「An ESG Practice認証」において、国内の宿泊施設として初めて『3御衣黄ザクラ』を取得いたしました。この認証は、ゴミの排出量や水の使用量、バリアフリー対応、地域の方との交流、文化芸術を伝承していく仕組みがあるかといった、計172項目で判断されるもので、総合的な取り組みが求められます。ザ・サウザンド京都と琵琶湖ホテルは世界的なGSTC基準に則した認証として承認を受けたことにより、「国際的に求められるSDGsの取組みを実践する宿泊施設」として認証されたことになります。「SDGs 100アクション」を達成し、それを裏付ける認証をいただいていることは、ホテルとして一線を画す取り組みだと自負しております。

ザ・サウザンド京都のお客様に「自分たちのお気に入りのホテルは、環境・社会・働く人に配慮した方法で事業運営をしている」という支持・共感をもっていただけるだけでなく、「一泊のザ・サウザンド京都の滞在が、京都の観光や世界にポジティブな影響を与える」というビジョンを、さらに高いレベルで達成するための後押しとなるでしょう。2023年はこれらの取り組みをさらに深掘りし、深化させていきたいと考えております。取り組んでいるようで実態が伴わない「SDGsウォッシュ」にならないよう、「進化から深化」へ、段階を上げていきます。

日々のコミュニケーションに注力し、風通しの良い職場作りを

2020年にマルチタスク制度を導入し、軌道に乗って3年が経ちました。新入社員の皆さんは入社後全員マルチタスク部に配属され、ジョブローテーションで部署を代わりながら、一通りの業務を経験します。宿泊部門の次は宴会部門へ、そこでさらに深く業務を行う。多くの部門を集中的に経験するのは大変なこともあるかもしれませんが、様々な部門から多角的に物事を見ることは、ホテル全体の動きを理解することにつながります。20代に3か所ほどの部門を経験していただいて、そこから適正職に就いても30歳です。
当社には5つのホテルがあり、ホテル間の異動は転職に値するほどで、各ホテルでの多様な仕事や働き方を経験できます。もちろん、入社したからには長く楽しく働いてほしいという強い想いがありますので、研修や働き方改革、ダイバーシティ推進にも力を入れています。

ホテル業界に向いているのは、人が好きでおもてなし精神のある人ではないでしょうか。それからどの業界もそうですが、正解がない時代になりました。今までの正解が、ある日突然正解ではなくなる。そこに対して常にチャレンジ精神を持ち、変化・対応することを恐れず、楽しんで前向きに取り組める人がいいですね。結果そういう方たちが活躍していると思います。働きやすさは、つまり「楽しさ」です。何をしているかわからない、きちんと指示がない、コミュニケーションが悪い。それでは楽しくないし、働きにくいですよね。当社では、部署を超えて社員が集まり社内の仕組みを話し合う「ダイバーシティカフェ」や、年に一度総支配人との「1on1ミーティング」を行い、話しやすくフラットな職場作りを心がけています。残業管理や目標設定、男性の育休取得の推奨等、働くスタッフが快適でないとお客様のCS(お客様満足度)も上がらないという考えで、「ES(従業員満足度)向上委員会」というプロジェクトを積極的に進めています。日本は観光立国なので、ホテル業はこれから必ず上向きになりますし、絶対になくなりません。そして人間力が磨かれていく業界です。ホテル業界と人が好きだと思ったら迷わず飛び込んできてください。皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

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