【THE THOUSAND KYOTOの都市養蜂プロジェクト】
「女王蜂の交代」～Vol.7～
※ミツバチ画像が登場します。

2023年10月4日

傷を負った女王

こんにちは。
ザ・サウザンド京都都市養蜂プロジェクトメンバーの和田です。

これまで当ホテル屋上で養蜂活動中に繰り広げられた数々のドラマの中でも
緊張感と難易度においてかなりの存在感を誇る「女王蜂の交代」。
今回はそのお話をさせていただきます。

ミツバチの群（１箱）は通常、
女王蜂１匹、残り約10,000匹のうち5%が雄蜂で、95%が働き蜂（全てメス）です。

女王蜂は産卵を、雄蜂は生殖を、働き蜂はその他全ての仕事を担います。（掃除、巣の防衛、餌作り、巣作り、子育て、蜜集め、花粉集めなど）

はじめに異変に気づいたのは、プロジェクトメンバーの１人で、普段は営業部で勤務する若手社員でした。

「女王蜂のお腹が凹んでいる」

別の巣箱のお世話をしていた私はびっくりして、営業部の彼がみていた巣箱の方に飛んでいきました。
たしかに、働き蜂よりも１回り大きくて長い女王蜂のお腹の側面が、四角く凹んでいます。
ひどくえぐれている様子はありませんが、ちょうど割り箸の先でつついたような傷がありました。

巣枠と巣枠の間に挟むダニ除けの薬があるのですが、
おそらくメンバーの誰かが、それを設置する際に薬の先端で女王蜂を押してしまったのだと思います。

その後しばらくは目立った変化もなく、秋は過ぎ、冬を越え…

2月になり、冬眠状態のように活動を最小限にとどめていたミツバチたちが
少しずつ目を覚まして蜜や花粉を貯めはじめたころ、次の異変が顕れました。

他の2群の女王蜂は産卵が盛んになってきたのに比べ、傷を負った女王蜂は全然卵を産んでいません！

3〜4年生きると言われる女王蜂ですが、産卵能力が低下するという理由で、養蜂では2〜3年で人工的に女王蜂を交代させるのが一般的です。しかし、この女王蜂は誕生してからまだ1年もたっていないのです。やはり、腹部の負傷が原因で卵が産めないのだと考えました。
卵を産むことができるのは女王蜂だけ。
群の存亡はたった１匹の女王蜂にかかっているのです。

女王蜂が卵を産まなくなればどうなるか？

群の95%を占める働き蜂は、寿命が１ヶ月しかありません。
つまり女王蜂が新しい働き蜂の卵を産まないと、１ヶ月後には巣に蜂はほとんどいなくなります。

巣は衰退し、はちみつもたまらず、巣箱は「ただの木箱」になるでしょう。それは、是が非でも避けたいところ。

ミツバチにとってもそれは同じようで、女王蜂の産卵状況が悪ければ新しい女王蜂を作ろうとします。

その時も、新しい「女王蜂のための巣房」（＝王台）が次々と作られていて、巣全体が新女王を待望しているのがひしひしと感じられました。