【THE THOUSAND KYOTOの都市養蜂プロジェクト】
「女王蜂の交代②」~Vol.8~
「女王蜂の交代②」~Vol.8~
2023年12月29日

前回の続き
こんにちは。
ザ・サウザンド京都 都市養蜂プロジェクトメンバーの和田です。
セイヨウミツバチがザ・サウザンド京都の屋上に来て2年半。
大雪に見舞われた1月の京都の大寒波にも負けず、
当ホテルでの2回目の冬を無事乗り越えたミツバチ。
そんな今年の春、新たなトラブルが…
冬眠さながら活動を最小限にとどめていたミツバチたちが
少しずつ動き始め、女王蜂の産卵も盛んになってくるころ、
3群のうち、1群の女王蜂に卵を産み始める気配がありません。
その寿命は3〜4年ほどとも言われる女王蜂ですが、
産卵能力が低下するという理由で、養蜂では2〜3年で人工的に女王蜂を交代させるのが一般的です。
しかし、この女王蜂は誕生してからまだ1年もたっていません。
前回のコラムをご覧になった方はご存知の通り、
実はこの女王蜂は怪我を負っており、そのため産卵ができないようです。
女王蜂が卵を産まなくなればどうなるか?
群の95%を占める働き蜂は、寿命が1ヶ月しかありません。
つまり女王蜂が新しい働き蜂の卵を産まないと、1ヶ月後には巣に蜂はほとんどいなくなり、
再起不能になります。
働き蜂も次の女王を作ろうとせっせと手順を踏んでいますが、
同じ巣の中には女王蜂は1匹というミツバチ界のルールがあります。
新女王が誕生すると、旧女王が半分以上の働き蜂とはちみつ・花粉などの餌を伴って、
群から飛び去ることによって1群1匹の秩序が保たれます。(これを「分蜂(ぶんぽう)」といいます)
しかし、せっかく大切に育ててきたものが失われるのを指をくわえてみている養蜂家はいません。
私たちにとって初めて直面した危機が間近に迫る「女王の交代」にどうすればいいかわからず、
いつも相談させていただいている養蜂家さまにご指示を仰ごうと決めた矢先。
なんと、働き蜂が卵を産み始めました。
女王交代への道のり
これは「働蜂産卵(どうほうさんらん)」といい、巣の危機を察した働き蜂による異常産卵です。
1つのハニカムに卵が3、4個入っていればその合図です。(女王蜂は1個ずつしか生みません)
正常時は女王蜂から働き蜂の産卵を抑制するフェロモンが出ており、働き蜂の卵巣は衰退しています。
しかし、いまや怪我のため女王蜂のフェロモンが弱まり、働き蜂も卵を産めるようになりました。
働き蜂は無精卵、つまり雄蜂(ゆうほう)(オス)の卵しか産むことができません。
掃除、巣の防衛、餌作り、巣作り、子育て、蜜集め、花粉集めなど
全てを担う働き蜂(メス)は生まれてこないのに、
他の群の女王蜂との交尾以外に役目のない雄蜂だけがどんどん増え続けたら、、、
群の崩壊が迫ってることはいうまでもありません。
養蜂家の方に、こういう状況下での女王蜂交代方法を教えていただき、
暖かい春の日に、私たちは以下の手順で女王蜂の交代を試みました。
①旧女王を巣から取り出し、(かわいそうですが…)処分する
②新しい女王蜂が生まれるのをまつ
③交尾飛行が成功し、産卵を開始したかを確認する
肝心なのは順番です。②を先にしてしまうと先述の事故(分蜂)が起こり、
巣の働き蜂、はちみつ、花粉が半減し大きな損失になります。
卵から16日で羽化する女王蜂ですが、ちゃんと生まれたかどうかを確認するのが、これまた大変です!
生まれてしばらくすると油性ペンでマーキングを行い、見つけやすいようにするのですが
はじめは(動き回る)10000匹の群れの中から、「働き蜂より少し大きいだけ」の1匹を見つけ出さなければなりません。
経験あるのみ
なんとか新しい女王蜂を見つけ出し、無事はじめての女王交代を執り行うことができました。
と、思ったのですが・・・
悲しいことに、その新女王は産卵をほとんどせず、働き蜂による産卵もおさまらず・・・
諦めずにもう一回同じ手順で新しい女王蜂を作りましたが、それでも状況は改善されず
結局、はじめの女王蜂が傷を負っているのを発見してから約半年後、
その群は隣の群と合同することになりました。
何かしらの理由で交尾飛行を行えなかったのか、働蜂産卵が進みすぎて巣に馴染めなかったのか・・・
生き物相手のことですので、一概に理由を決めつけることはできませんが
メンバー全員で反省すべき点や考察を共有し、失った3匹の女王蜂を無駄にしないことを心に決めました。
女王蜂の交代がいかに難しいことかを痛感した一騒動でした。
To bee Continued…